祖霊信仰は、仏教やキリスト教などのように
教祖が教えを説いたわけではないようで、自然
発生的に生まれた信仰です。初春と初秋の年
2回、祖先が 「あの世」 から 「この世」 に
帰ってきて、しばらく一緒に過ごし、また戻ると
考えられてきたそうです。夏に祖先の供養を
行う風習が確立されたのは8世紀ごろと考え
られている様ですね。
盂蘭盆会
盂蘭盆会は、個人をしのび先祖に感謝し、供養
する仏教行事のことだそうです。盂蘭盆はサンス
クリット語で 「逆さ吊り」 を意味する 「ウランバナ」
の音訳と言われている様です。盂蘭盆会の始まりに
ついて、次のようなエピソードがあるそうです。
釈迦の弟子であった目連 (もくれん) は餓鬼道に落
ち、逆さ吊りにされて苦しむ母親を救うため、雨季の
修行が明ける7月15日にすべての修行僧に飲食
を施したようです。すると、施しの一部が母親にも届
き、その功徳によって母親を救うことができたのだ
そうです。
日本に仏教が伝来したのは6世紀中ごろとされ、そこ
から8世紀ごろまでの間に広く普及していくようです。
その過程で、祖霊信仰の風習と盂蘭盆会が結び
つき、日本独自の 「お盆」 の風習が形成されたと
考えられているかと思います。
|新盆と旧盆
お盆には大きく分けて新盆と旧盆があり、地域に
よって行われる時期に違いがあるそうで、なぜ地域
によって違いがあると思いますか。
新暦の導入がきっかけ
お盆に新旧があるのは、1872年(明治5年)に明治
政府が国際基準に合わせて太陽暦(グレゴリオ暦)を
導入し、それまでの太陰太陽暦から改暦を行ったため
だそうです。
改暦により太陰太陽暦は 「旧暦」 、新たに採用した
太陽暦は 「新暦」 となり、旧暦で行っていた行事
は、新暦では約1か月遅れることになったのだ
そうです。
お盆の場合、新暦の7月15日に行う 「新盆」 が
一部地域では定着したそうですが、従来通りの時期
に近い1ヶ月遅れの8月15日の 「旧盆」 に行うのが
一般的のようです。
新盆で行う地域
新盆の地域は、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県
の都市部、熊本県の都市部、金沢市の一部、函館市
の一部などだそうです。
新盆が全国的に定着しなかった理由には諸説ある様
ですが、農業が盛んな地域では7月は農繁期になり、
8月のほうが行いやすかったという説もあるのだそ
うですね。
東京など、政府のお膝元であり、新暦のお盆を採用
ぜざるを得なかったという事情もあったことと思います。
なお故人が亡くなり、四十九日後に初めて迎えるお盆
のことを初盆(はつぼん)と言うそうですが、それを指し
て新盆(にいぼん)と呼ぶこともあり、新暦のお盆も新盆
なので、混同されやすいかと思いますが、地域によって
は読み方を変えるなどして区別していることのようです。
旧盆で行う地域
以前勉強した地域以外は旧盆で、夏休みとも重なり、
今では旧盆の方が一般的になっていますね。ただ
し、沖縄県と鹿児島県の奄美諸島は現在も旧暦盆
を採用しているそうです。
旧暦と新暦はちょうど一ヶ月違いになるわけでは
ないようで、年によってズレが生じ、旧盆も本来で
あれば、毎年日にちが違うのだそうですが、便宜
上新暦の一ヶ月後である8月15日に行うように
なったそうです。
沖縄県など一部地域では旧暦通りでお盆を行
うため、毎年お盆の日付が変わるそうです。
沖縄のお盆
沖縄県と鹿児島県の奄美諸島では旧暦の7月
13~15日にお盆を行い、今年のお盆は8月
28~30日になる様です。
沖縄ではお盆に限らず年中行事は旧暦で行う
そうですが、なかでもお盆はとても大事な行事
で、各家庭ではお盆のための伝統料理を用意
し、先祖をお迎えしてもてなし、エイサーと呼ば
れる盆踊りをしながら地域内を練り歩くなど、
独特の風習があるのだそうですね。
|お盆で行う行事
毎年お盆にお墓参りに行っても、お盆の行事
やスケジュールについて、あまり詳しく知らない
人もいるかと思いますが、お盆の迎え方は地域
や宗教によって違いがあるそうで、一般的な行事
の流れや段取りなどについてみてみましょう。
迎え火
お盆は8月(7月)13~16日の4日間で、13日
が迎え盆、14日と15日が中日、16日が送り火に
なる様です。
13日 (迎え盆) の日夕方に、先祖が迷わず帰って
来られるよう、迎え火を焚き、玄関などにも盆提灯
を灯すそうで、仏壇に精霊棚を設置し、線香や花、
ローソク、食べ物なども供えるのだそうです。
キュウリやナスに割り箸などで四つ足ををつけ、
馬や牛に見立てたお供えを見たことがある方も
いるかと思いますが、これらは精霊牛、精霊馬
と呼ばれる、先祖があの世とこの世を行き来する
為の乗り物で、13日に供えるものの一つだそ
うです。
墓参り
墓掃除は迎え盆までに済ませておくのが望ま
しい様です。難しければ墓参りの際に行っても、
良いかと思います。掃除の際、墓周辺の雑草や
落ち葉などを取り除き、墓石の汚れを落とす
そうです。
墓参りは14~15日の中日にし、中日には家族
や親戚などへの挨拶回りや、地域によっては
会食をする風習もあるのだそうです。
送り火
16日は祖先が 「あの世」 に戻る日で、15
~16日には、夕方になったら、迎え火を焚いた
同じ場所で送り火をしてお見送りをし、送り行事
では京都の五山送り火が有名だそうですが、
精霊流しや灯篭流しなどを行う地域もあるそう
ですね。
盆踊り
お盆の期間中に盆踊りが行われる地域もあり、
盆踊りは仏教の念仏踊りが由来とされ、本来は
お盆に帰って来た先祖の霊を供養し、また送り
出すための行事だったそうです。今では地域の
祭りやイベントになり、観光資源になっている
ものもあるそうです。
特に日本三大盆踊りとされているのが、徳島
県の阿波踊り岐阜の郡上踊り、秋田県の
西馬音内(にしもない)盆踊りで、毎年全国
から多くの観光客が訪れるそうですね。
|まとめ
毎年お盆正月には欠かさず帰郷するという人
もいるかと思います。お盆は離れて暮らす家族
が集まる機会でもあり、家族で墓参りをしたり、
会食をしたりしながら亡き人の思い出話しをして
過ごすのが、基本的なお盆の過ごし方と言える
かと思います。
コロナ禍で開催されなかった盆踊りも、今年は行わ
れるところが多いそうで、久しぶりに参加してみるの
も良いかと思います。
また次回おたのしみに 峰不二子