起床後、太陽に当たり、食事をすることで体内時計がリセットされます。人間の体内時計は24.2時間とも24
時間11分ともいわれていますが、これをリセットしないと1週間で1時間以上、体内時計がずれてしまいます。
そのせいで正常なら夜、分泌されるメラトニンという睡眠を促すホルモンが、理想的な時間に分泌されなくな
ってしまうようです。メラトニンは免疫機能とも密接に関係しています。そのため睡眠に悪影響が出るだけでな
く、風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなってしまうという点も指摘されているようです。
睡眠の質が悪いと成長ホルモンの分泌にも影響が出ます。成長ホルモン分泌が減ってしまうと、私たちの肌
や内臓などの細胞が正常にターンオーバーされなくなってしまい、体の回復機能や新陳代謝を悪化させる危険
性があります。つまりメラトニンは、肌や内臓などの若さを保つことに貢献しているといえるでしょう。
これに対して、朝、太陽光を浴びることで分泌が高まるのがセロトニンです。セロトニンは「幸せホルモン」
とも呼ばれているように、心の安定を保つ脳内ホルモンです。ストレスホルモンが増えすぎないよう調節す
るのもセロトニンです。また、自律神経の安定性にも関係しており、老化の防止にもつながっています。
これらのことからわかるように、太陽光を浴びすぎると老化を招きますが、浴びないことも老化につながるの
です。
ビタミンⅮを生成するには、太陽光=紫外線を肌に浴びる必要があります。顔などに紫外線を浴びることでシミ・し
わが気になる人は手でも足でも構いません。また、ビタミンⅮの生成は加齢によって低下するため、高
齢者ならなおさら、適度な日光浴をする必要があります。
メラトニンやセロトニンの分泌で必要なのは、目から可視光が入ることです。そのため、UVカットのサングラ
スやガラス越しでも効果はあるとされています。しかし、目から紫外線が入ると全身のメラニン活性が高まっ
てしまうため、シミの原因になってしまいます。また、角膜が炎症を起こしたり、将来的に白内障や加齢黄斑
変性といった症状に結びつく危険性があります。その防御のためには、サングラスをつけるのも一つの方法で
す。しかしあまり濃い色のサングラスをすると、瞳孔が開いてしまうことにつながります。すると目に入る
紫外線がかえって増えてしまいますので、注意が必要です。
どれくらい日に当たるといい?
冬の時期より太陽の高度が高い夏の方が紫外線の量は多くなります。また1日のうち紫外線
の量が多いのは、太陽が頭上近くに来る10時~14時です。
従って、夏は昼間ではなく、朝や夕方に太陽光を浴びるようにしましょう。昼間の時間帯しか外出ができない
場合は、公園や林の木漏れ日でも十分な紫外線を浴びることができるようです。
20歳までに、一生浴びる紫外線の半分以上を浴びているという報告もあります。とくに学生時代、野外スポー
ツの部活動を行っていた場合、その平均より多いことが考えられます。
若いうちはⅮNAを自然に修復できます。それでも自然に蓄積され、加齢とともに肌の老化や皮膚がんの危険
が迫ってきます。紫外線を浴びないことの危険性も考えながら、最低限の日光浴をするとよいでしょう。
ところで、冒頭で触れた高毒性物質「ソラレン」以外にも、注意が必要なものがあります。その代表的なもの
が湿布薬で、一部の湿布薬に含まれるある成分が、光線過敏症を引き起こしてしまうからです。
湿布薬を貼ったまま紫外線を浴びると、皮膚が炎症を起こして紅斑を引き起こしたり、ひどいときにはびらん
状なったりする場合があります。湿布をはがしたあとでもそんな状態になることがあるのですが、それは30~
60日後であっても、成分が皮膚に残っていることがあるからだといわれているようです。その成分とはケトプロフェ
ン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカムなどです。これらの成分に関しては、光線過敏症に関する注意
喚起が医療関係機関によって行われているようです。
また、日焼け止めのなかには界面活性剤など、「一時刺激物質」が含まれているものがあります。人間の体には
肌を修復する機能が備わっていますが、一時刺激物質にさらされ続けるとその機能が低下し、シミの原因に
なったりして肌の老化につながってしまうことが指摘されています。
若々しい肌を保ちたい。皮膚がんの危険性も防ぎたい。しかい骨の健康も保ちたい。毎日を幸せに、快適に過
ごしたい。それらの願いをかなえるためには、夏は昼間の直射日光を避けて10~20分程度、冬は30分から1時間
程度の日光浴をするなど季節と時間帯を考えて、太陽光と適切な関係を保つのがよさそうです。
峰不二子